症例報告詳細

20代女性 原発性リンパ浮腫

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通常の治療内容:リンパ管静脈吻合術
治療費用:約10万円(3割負担)
リスクや副作用:術後の悪化(0.1%未満)

20代女性。原因不明の両下肢浮腫(特にアキレス腱周囲)が出現し、様々な医療機関で診断がつかず、私どもの診療チームに紹介受診されました。

リンパシンチグラフィにて、原因不明のリンパ節萎縮を認め、原発性リンパ浮腫と診断しました。

LVAと保存療法の組み合わせで治療を行いました。

治療前(上段)は、鬱的な心理状態から仕事も辞め、自宅に引きこもりがちになっていました。治療後(下段)は、心理的にも前向きになり、仕事も再開し、毎週フィットネスクラブに通い、健康的な生活を送ることができております。ファッションを楽しむこともできています。

原因不明のリンパ浮腫でしたが、私どもの診療チームでは、画像診断(リンパシンチグラフィやICGリンパ管蛍光造影検査、リンパ管エコー検査等)により、適切な診断と、治療計画を立てます。その上で、患者さんの希望や目標設定に合わせて、外科手術、リンパセラピストによる適切なストッキング指導、理学療法士によるリハビリテーションにより、人生を立て直すお手伝いを様々なアプローチにて実施します。

治療のポイント1【蜂窩織炎の抑制】

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当診療チームにて、リンパ管静脈吻合術(LVA)治療にて蜂窩織炎(患部の発赤・疼痛、38.5℃以上の全身のはつね)の発生確率が約1/8に抑えられることを科学的データとしてまとめました。
現在の治療成績は、90%を超えております。年間2回以上の蜂窩織炎を発症される患者さんには、LVAをお勧めしております。蜂窩織炎を抑えたのちに、保存療法を強化することで、より安定した状態で浮腫・蜂窩織炎・痛みの治療が進みます。

治療のポイント2【体に負担の少ない治療の提案】

当診療チームでは、局所麻酔でのリンパ管静脈吻合術(LVA)を実施しております。

手術の切開創も約1-3cmでと、体の負担はとても小さな手術となり、90歳を超える患者さんや、心臓などに問題を抱える患者さんでも手術が安全に実施できております。

術前に超音波装置(エコー)や、ICGリンパ管蛍光造影装置を用いることで、正確に集合リンパ管や吻合先の静脈の状態(位置関係・サイズ・機能)を確認することで、10年前に10か所吻合していた成績と、現在の3か所吻合する成績が同程度になっています。手術前にこれらの画像診断を行うことで、手術時間も半減(約2.5から3時間程度)し、傷のサイズや、数も減っています。重症リンパ浮腫患者さんにおいても、良好なリンパ管を見つけることができるようになってきました。

治療のポイント3【運動療法と体重コントロールの併用】

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モミの木診療所では、JR東京総合病院リンパ外科・再建外科との連携で、入院(最長4週間)による保存療法・運動療法・体重コントロールを行っています。リンパ管静脈吻合術(LVA)の治療において、効果が出にくい患者さんは2つのタイプがおられ、1つ目は適切な保存療法が実施できていない方、2つ目は体重コントロールがうまくいっていない患者さんになります。

外来にて保存療法や、体重コントロールを実施するも、うまくいかな患者さんについては、入院での治療をお勧めしています。退院後も適切な保存療法、運動、体重コントロールができるよう入院プログラムを組んでいます。

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