症例報告詳細

60代女性 子宮がん術後の両下肢リンパ浮腫

通常の治療内容:リンパ管静脈吻合術
治療費用:約10万円(3割負担)
リスクや副作用:術後の悪化(0.1%未満)

18年前に子宮頚癌に対して広汎子宮全摘術、リンパ節郭清術、放射線治療術を受けました。
治療後から、両下肢リンパ浮腫が出現し、保存療法を行いましたが徐々に症状が悪化しました。ここ数年は年4回程度の蜂窩織炎(40℃程度の発熱)が起こり、またリンパ漏が下腿裏面や大腿内側から持続している状態で圧迫療法を行うことも社会生活を送ることも大変難しい状態でした。

当診療チームにおいて、2回の局所麻酔下リンパ管静脈吻合術を行い、蜂窩織炎が起こらなくなったことで圧迫療法を行えるようになり、浮腫の改善に加えて、リンパ漏も消失しました。

治療のポイント1【適確な画像診断】

私共の診療チームは、医学的データに基づき、患者さん一人一人の目標にあった治療方針を決定しております。
そのために、患者さんご自身のリンパ機能を知ることが重要です。当院では全症例に対して、リンパシンチ検査を行い、リンパ機能を評価の上で、治療方針を決定しております。上記患者さんは、著しい浮腫に悩まされていましたが、良好なリンパ機能が残存しており、LVA(リンパ管静脈吻合術)の有効性を確認したうえで手術を実施しました。

治療のポイント2【豊富な医学データ】

私共の診療チームでは、年間400件(肢)以上のリンパ管静脈吻合術(LVA)を実施しております/平成30年。全例において、治療効果の科学的解析を行っており、日々治療成績の向上に努めています。この豊富な治療データを基に、患者さん一人一人の治療方針を決定しています。これまでのリンパ浮腫治療は、「足を高くして寝てください」、「温泉はやめてください」、「スポーツは避けてください」という行動制限によりなされていました。
当診療チームの治療方針は、適切な治療(保存療法、ダイエット、外科治療等)を行うことで、日々の生活を積極的に楽しんでいただくことにあります。私共の患者さんたちは、フルタイムでの立ち仕事に勤務されている方もおられますし、マラソンや登山、世界一周旅行に挑戦されている患者さんもおられます。
人生の楽しみとして、80歳で日舞や社交ダンスを毎日楽しんでおられます。豊富な科学的データを積み上げることで、リンパ浮腫の治療は大きく変わってきました。

治療のポイント3【多職種チームワーク】

当診療所は、JR東京総合病院リンパ外科・再建外科、ベテル南新宿診療所、名古屋第二赤十字病院リンパ浮腫セラピストチームとの連携を重視しています。私共の10年におよぶ治療データの解析では、外科治療だけで著効する患者さんは約7%に留まっています。適切な保存療法や、体重コントロールが、治療効果を最大限に向上させるカギになります。

そのために、各施設のプロフェッショナルなスタッフとの連携がとても重要となります。モミの木診療所からJR東京総合病院、ベテル南新宿診療所は徒歩5分以内に立地しており、スタッフ交流も活発で、細やかな連携が可能となっています。

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